BOOKSなかだ掛尾本店調べ (2019年 1月28日号)

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一切なりゆき
 樹木希林のことば
 文春新書 1194
樹木希林
●文藝春秋 ●ISBN 9784166611942 ●本体 800円+税

 2018年9月15日、女優の樹木希林さんが永眠されました。樹木さんを回顧するときに思い出すことは人それぞれです。古くは、テレビドラマ『寺内貫太郎一家』で「ジュリー〜」と身悶えるお婆ちゃんの暴れっぷりや、連続テレビ小説『はね駒』で演じた貞女のような母親役、「美しい方はより美しく、そうでない方はそれなりに……」というテレビCMでのとぼけた姿もいまだに強く印象に残っています。近年では、『わが母の記』や『万引き家族』などで見せた融通無碍な演技は、瞠目に値するものでした。まさに平成の名女優と言えるでしょう。

 樹木さんは活字において、数多くのことばを遺しました。語り口は平明で、いつもユーモアを添えることを忘れないのですが、じつはとても深い。彼女の語ることが説得力をもって私たちに迫ってくるのは、浮いたような借り物は一つもないからで、それぞれのことばが樹木さんの生き方そのものであったからではないでしょうか。本人は意識しなくとも、警句や名言の山を築いているのです。それは希林流生き方のエッセンスでもあります。表紙に使用したなんとも心が和むお顔写真とともに、噛むほどに心に沁みる樹木さんのことばを玩味していただければ幸いです。


2.↑
ニムロッド
上田岳弘
●講談社 ●ISBN 9784065143476 ●本体 1,500円+税

第160回芥川賞受賞作。

それでも君はまだ、人間でい続けることができるのか。
あらゆるものが情報化する不穏な社会をどう生きるか。
新時代の仮想通貨小説。

仮想通貨をネット空間で「採掘」する僕・中本哲史。
中絶と離婚のトラウマを抱えた外資系証券会社勤務の恋人・田久保紀子。
小説家への夢に挫折した同僚・ニムロッドこと荷室仁。……
やがて僕たちは、個であることをやめ、全能になって世界に溶ける。「すべては取り換え可能であった」という答えを残して。 ……


3.↑
1R1分34秒
町屋良平
●新潮社 ●ISBN 9784103522713 ●本体 1,200円+税

 なんでおまえはボクシングやってんの?
 青春小説の新鋭が放つ渾身の一撃。デビュー戦を初回KOで飾ってから三敗一分。当たったかもしれないパンチ、これをしておけば勝てたかもしれない練習。考えすぎてばかりいる21歳プロボクサーのぼくは自分の弱さに、その人生に厭きていた。長年のトレーナーにも見捨てられ、変わり者のウメキチとの練習の日々が、ぼくを、その心身を、世界を変えていく――。


4.↓
宝島
真藤順丈
●講談社 ●ISBN 9784065118634 ●本体 1,850円+税

第160回 直木賞受賞!
 希望を祈るな。立ち上がり、掴み取れ。愛は囁くな。大声で叫び、歌い上げろ。
 信じよう。仲間との絆を、恋人との愛を。美しい海を、熱を、人間の力を。

 英雄を失った島に、新たな魂が立ち上がる。固い絆で結ばれた三人の幼馴染みーーグスク、レイ、ヤマコ。生きるとは走ること、抗うこと、そして想い続けることだった。少年少女は警官になり、教師になり、テロリストになり――同じ夢に向かった。


5.↑
富山地方鉄道殺人事件
西村京太郎
●新潮社 ●ISBN 9784103344346 ●本体 830円+税

 トロッコ列車の終点で起きた殺人。宇奈月、富山、立山、黒部ダム――消えた犯人を十津川警部が追う! 「宇奈月から黒部への旅」と書き残して、若手官僚が失踪。彼を知る女性新聞記者が、黒部峡谷鉄道の終点・欅平で殺される。しかし、犯人の足跡は宙に消えた……。路線距離一〇〇キロ超の富山地方鉄道と、夏なお難所の黒部峡谷。このどこかに犯人が潜んでいる! 十津川警部の追跡の結末は? 長編トラベルミステリー最新作。


6.↑
歌舞伎町ゲノム
誉田哲也
●中央公論新社 ●ISBN 9784120051593 ●本体 1,600円+税


 新宿の街に巣くう毒虫どもを仕置きするという「歌舞伎町セブン」。その彼らの元に舞い込む依頼とは……。

「復讐」という言葉を借りて、数々の人間模様を目の当たりする彼ら。そのとき「歌舞伎町セブン」のメンバーはどう動くのか。新メンバーも加入し、不気味で謎めいた巨大組織「NWO」もまた、動き出す! シリーズ最新作!


7.↑
源頼朝  武家政治の創始者
  中公新書 2526
元木泰雄
●中央公論新社 ●ISBN 9784121025265 ●本体 900円+税

 流人の挙兵はなぜ成功し、鎌倉幕府はいかなる成立過程を辿ったのか。
 幾多の苦難を経て、武門における唯一の勝者となった波瀾の生涯。



8.↑
いい女、ふだんブッ散らかしており
阿川佐和子
●中央公論新社 ●ISBN 9784120051562 ●本体 1,200円+税

 父を看取り、認知症の母を介護し、対談・執筆と多忙を極める著者。自ら「床族」と称し、何でも床に積んでしまう片付け下手で、捨てられない性格と自己分析。また、連続ドラマ「陸王」に出演、女優としても活躍、さらに還暦過ぎての結婚まで……。

 じわじわ訪れる小さな老いを蹴散らして、挑戦し続ける激動の日々を、赤裸々に綴る。不肖アガワの『婦人公論』人気連載エッセイがついに書籍化。


9.↑
居た場所
高山羽根子
●河出書房新社 ●ISBN 9784309027760 ●本体 1,400円+税

 表示されない海沿いの街の地図を片手に、私と小翠の旅が始まる―。
 記憶と存在の不確かさを鮮やかに描き出すまったく新しい、「生」の魔法的リアリズム。  第160回芥川賞候補作。


10.↓
熱帯
森見登美彦
●文藝春秋 ●ISBN 9784163907574 ●本体 1,700円+税

 汝にかかわりなきことを語るなかれ――。そんな謎めいた警句から始まる一冊の本『熱帯』。
 この本に惹かれ、探し求める作家の森見登美彦氏はある日、奇妙な催し「沈黙読書会」でこの本の秘密を知る女性と出会う。そこで彼女が口にしたセリフ「この本を最後まで読んだ人間はいないんです」、この言葉の真意とは?
 秘密を解き明かすべく集結した「学団」メンバーに神出鬼没の古本屋台「暴夜書房」、鍵を握る飴色のカードボックスと「部屋の中の部屋」……。
 幻の本をめぐる冒険はいつしか妄想の大海原を駆けめぐり、謎の源流へ!